鏡をテーマにした香りを2つ作りました。
「外鏡(そとかがみ)」と「内鏡(うちかがみ)」です。
鏡をテーマにした香りは、私にとって思い入れのあるものです。
調香を学び始めた頃に一度作ってみたいと挑戦してみましたが表現できず。技術、表現力、人間力がまだまだ及ばず、いつか作ってみたいと思っていました。
2024年に鏡の香りを作ってください、と富永大士さんからご依頼を頂き、16年ぶりの再挑戦となりました。私一人だったら、鏡の香りの制作をまだまだ先延ばししていたことと思います。
この機会をくださった富永大士さん、和鏡の制作過程を見学させていただき、大きなインスピレーションを頂きました、鏡師の山本晃久さんに感謝申し上げます。
富永大士さん インスタアカウント @taishi_tominaga
山本晃久さん インスタアカウント @akihisa.yamamoto、山本合金製作所さん
(2024年富永大士さんの個展『自然界のエクスタシー』で鏡の香りを置かせていただきました。)
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鏡はとても不思議な存在で、とてもイマジネーションを刺激します。
まずは鏡について色々と調べる、鏡を使ったものを見てみるなどから、香りのイメージの旅が始まりました。
鏡を探っていく
鏡について色々と調べてみると、謂れ(いわれ)、神話、象徴、歴史、文化など数多くの面を持っていることがわかります。それらを全部香りに詰め込んで表現するのはまだ難しいと思い、今回は鏡が持つ様々な側面を分けて表現してみることにしました。
それにはまず『鏡の元型(アーキタイプ)』を表現したいと思い、鏡の元型とは何だろう?というところから探る旅を続けました。
ちょうどイメージを深めているときに、和鏡、魔鏡を作っていらっしゃる、鏡師の山本さんのところで、和鏡の制作、そして実際に鏡を磨くワークショップに参加させていただきました。(和鏡を制作する技術、工程。そこにかかる沢山の作業。そこに連綿と繋がる人の手を感じました。そして、山本さんの仕事への考え、在り方に感銘を受けました。)
そこで私が得たことは、鏡は不思議なものだけれど、私たちの生活やあり方に根差しているものであるというということ。鏡に意味合いを盛り込み過ぎずに、もっとシンプルに鏡の本質を表現することが、私が今回表現したいことに繋がるのではないかということでした。
そこから、鏡についてのイメージ、情報を削ぎ落としていくという作業をしていきました。
そうしていくと、ヒトの認識、意識の変化、進化で鏡の捉え方、使われ方が変わっていったことに気づきました。
さらに深めて削ぎ落としていくと2つの考えに行きつきました。
■鏡は反射しているだけ ~見る人の「意識」「使い方」によって、見え方、捉え方が変わる~
鏡に映った像が左右逆に見えるのも、ヒトの認識の仕方が関わっていると言われています。誤解を恐れず言うならば、鏡に何が見えるか、どう見えるかは自分の意識そのままを表します。鏡はただ反射しているだけなのです。
■外の世界を含めての私 ~ひとつの鏡を使っても、自分のことは自分で見えない~
正確に言うと、鏡に映る姿は私ではないし(左右逆)、周りから見える自分の姿でもない(こちらも左右逆)。これはもうひとつの鏡を使うことで左右逆が解消され、他人から見ている自分の姿が見えます。(見えるが、目を合わすことができない)。
このことから、周りの存在もあって私を見る(知る)ことができる。つまり『私』という存在は、鏡(外の世界、他人)があって、私、個が完成されるのではないか。
そこから『外鏡(そとかがみ)』の香りを調香しました。
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内側にある鏡
鏡の元型(アーキタイプ)を香りに表現した後に、この香り1つだけでは鏡を表現したという感覚にはならない、何か違うなという感覚がすぐにやってきました。
いったいこの感覚は何だろうかと自分に聞いてみると、鏡を見たときに感じる”感情や内側に感じる何か”があって、それを表現しないと鏡の表現が欠けている気がしたのです。
鏡を見たときに感じる、自分の内側に感じる、反応する何かは何だろう?
それを探す旅が始まりました。
その何かは私たちの心の中に「鏡」があるからではないか、というところに行きつき、内側の鏡を『内鏡(うちかがみ)』という香りに表現しました。
興味深いことは、内鏡(うちかがみ)は夜に作ったことです。
いつもは太陽が出ている時間帯に調香をするのですが、内側の鏡をイメージし、調香するには夜の時間帯の方が作りやすかったのです。
そう考えると内側の鏡は暗いほどよく見える(明るいほど反射する)、外側の鏡は明るくて鏡面が磨かれているほどよく見えるように思います。
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